「自分『好き』の意味、分かっとる?」









――圏外の恋  第1話――









「何よ、その言い方。」

いつもお世話になっている先輩が私の想い人・・忍足先輩を睨みつける。
どうして、こんな事になっているのかと言うと・・・

私は放課後、先輩の教室で恋の相談にのって貰っていた。
そして忍足先輩は先輩と同じクラスで
偶然、教室に戻って来た忍足先輩に好きな人を聞かれちゃって、こんな事になってます。
私は帰宅部だから忍足先輩とは部活も違くて、ほとんど話した事も無かった。

、チョット外してくれへんか。」

「・・・・分かった。」


ガラガラ・・バタン


先輩が教室から出て行く。

「俺のこと知らんくせに、何で好きなんて言えるん?俺はお前の事知らんし・・・・悪い。」

「・・・・。」

そのまま忍足先輩は教室を出て行ってしまった。・・・私一人っきり。

「ぁ〜あ。もう最悪。どうせ告白なんてするつもり無かったから、これで・・・やっと・・吹っ切れる気がする。」

無意識に流れてくる涙を必死にこすりながら独り言をぼやいた。




それから3日後のこと。

「ねぇ、!」

「はい?」

帰ろうとしてトボトボ歩いていたら先輩が慌てて走ってきた。

「あのね、侑士がドジって怪我したみたいなんだけどアタシ忙しくて保健室行けないから行って来てくれない?」

「ぇえ!?」

「お願い!!・・、保険委員だし、丁度通りかかったんだし。」

「・・・分かりました・・。」

「ありがとう!じゃっ、ヨロシク!!」



「(どうしよう・・嫌われちゃったから絶対無視される!・・・・・でも、どうしようもないかっ・・。)」


ガラガラ


「失礼します・・・。忍足先輩?」

「・・なんや。俺に用か?」

「ぁの・・怪我の手当を先輩にお願いされて・・・・。」

「こんなん一人で出来る。」

「でも腕を怪我したんじゃ・・・・。」

忍足先輩は腕の傷口に当てていたガーゼを机に置いた。そして消毒液やガーゼなどを用意し始めた。
・・・・ってチョイ待ち!!!忍足先輩・・何なんですか!?そのグッサリ切れた傷口は!!!

「忍足先輩っっ・・・・・!!!」

「何や?」


ビシッ


「そこに座って下さい!!」

私はソファーを指差し忍足先輩の持っていた救急セット一式をぶんどる。

「自分で出来っ・・・」

「やらせません!!!!座って下さい!!もぅ・・どうしたらこんなに深い傷つくれるんですかぁ・・・?」

消毒液の蓋を外し小さなガーゼに染み込ませピンセットでつまみ忍足先輩の腕の傷口に当てる。

「・・・・・・・・こけた・・・。」

「ぇ・・・?こ・・こけ?」

「部室にあったラケットにつまずいて、こけた所にあった割れたラケットで・・ザクっと・・・。」

「・・・ラケットの恨みでも買う様な事でもしたんですか・・・・・?」

「知らんわ・・。・・・・あ〜ぁ。格好悪っっっ!最悪や!!」

忍足先輩は顔をプイっと背けた。・・顔が少し赤くなってたのは・・・・気のせいかな?

「・・・・。」

私は黙って傷の手当をする。笑いもせず呆れもせず。

「・・格好悪いと思うなら・・・言ったらええやん・・。」

「ぷっ・・ぁはははは・・・!」

忍足先輩の言った事が変とか、そういう訳じゃない。けど小さな笑いが込み上げてくる。

「・・・やっぱ・・格好悪いんか・・・。」

「ぁははは・・・・違うんです・・!なんだか可愛いなぁ〜って思って・・・ぁははは・・!」

「可愛い!?」

「ぁ。怒ってます?褒め言葉なんだけどなぁ。」

「男に可愛い言う言葉は褒め言葉やない。」

「でも、可愛いなって思っちゃったんですから♪はいっ、終わりました♪」

私は忍足先輩の手当てを終わらせ顔を上げる。
思った以上に忍足先輩の顔が近くてチョットどきどき。

「ぉ。サンキューな。」

「いえいえ♪」

私は万遍の笑みで答える。

「・・・なんか・・最初のときと性格ちゃうな。」

「ぇ・・?(なんで私の苗字知ってるんだろう・・・教えた覚えないんだけどなぁ。)
あ〜・・あのときは、忍足先輩にふられるって分かってたんで言葉が出てこなくて。
でも今日は、嫌われちゃったにも係わらず忍足先輩は話してくれて・・・嬉しかったです。」

無理して笑ってみせる。でも駄目だ・・・・涙出そう・・。そうだよ。私、嫌われちゃったんだよ。

「誰も嫌ってなんかない。」

「・・・?」

「俺がをふったんは、お互いの事を知らんかったからで
お互いの事を知らんのに嫌いも何もあるか。」

忍足先輩は凄く優しく笑ってくれた。そう・・私は、この忍足先輩の顔が好きなんだ。
初めて会ったときも、こういう風に笑ってくれた。




「ん〜・・・・届かないぃ・・後チョット・・・後ぉ・・ちょっとぉ〜・・ん〜・・・・。」

私は保健室の棚の上の箱を取ろうとしていた。
でも届かなくて・・誰もいなくて・・・椅子を持ってきて取ろうとした。
それでも、あと少しの所で届かない。


グラッ・・


「んー!?」


ガシッ


「ふ〜。あぶなっ。」

椅子から落ちそうになったとき偶然保健室に用があった忍足先輩が危機一髪のところで助けてくれた。

「・・・・・ぅをしたり先輩!!!???」

先輩から忍足先輩の事は聞いていたから知ってたは知ってたし、たしかに凄く格好良いなって思ってた。
でも・・あのファンの数を見たら好きになんかなれる訳ない・・・・・。それに話す機会もなさそうだし。
とくに意識した事はなかった。

「なんや、俺の事知ってるんかい。」

「たっ・・助けて下さって有難う御座いました!!」

「あぁ。怪我はないか?」

「はい。大丈夫です。」

「そうか。そら良かったわ。・・けど、無理したらアカンで?」

そう言うと優しく笑って棚の上の箱を取ると私に渡してくれた。

「次こそ絶対、怪我するで。」

「・・・・はい。」

なんだか忍足先輩の言葉がくすぐったくて思わずにっこり笑った。
このとき、世に言う一目惚れってやつを私はしてしまった。




「・・っ・・・・・。」

私は忍足先輩の『嫌ってなんかない』っていう言葉を聞いて、その優しい笑顔を見て涙が出てきた。

「なっ・・・泣くなや・・。」

「・・だってぇ〜・・・・。」

「阿呆・・。」

「・・・馬鹿ですぅ〜・・・・。」

「・・クス・・・馬鹿。」

忍足先輩は私が泣き止むまで、ずっと頭をなでながら側にいてくれた。





次の日。

「ふふふっ。」

「何よ、侑士。そんな怪しい笑い方して。」

「昨日の怪我のおかげで部活出なくてすむから嬉しゅうてなぁ〜♪」

掃除の時間、外掃除の忍足先輩と先輩が話しているのを遠くからポケーっと同じく外掃除の私が見る。
なにやら忍足先輩はあの後病院に一応行ったら、あんまり手は動かさないように。と言われたらしく
部活禁止になっているらしい。

「そんなに部活嫌いなの?」

「んなわけあるか。部活は好きや。
せやけど最近ずっとハードな練習ばっかりさせられてたさかい。
たまには休息も必要やからな。榊先生に頼んでも休みはもらえる訳ないし・・即レギュラー落ちや。」

「たしかに・・榊先生厳しすぎだもんねぇ〜。・・でも暇でしょ?」

「暇やないで〜。図書館でDVD見まくるんや♪図書館で見ればタダやからな。」

「せこっ。」

「せこくなんか無いで。利用できるモンは利用せなアカン。」

「まぁね。・・アタシはアッチ掃除してくるよ。
こんな上機嫌の侑士、気持ち悪くてこれ以上見てられない。」

「ひどっ。」

「ホントのことでしょぉ〜。」

先輩は遠くの方に走っていく。
それにしても本当に仲良いなぁ〜・・。忍足先輩と先輩。

「くしゅんっ!」

ん〜・・・風邪ひいたかなぁ。それとも誰かが私のうわさをしてるのか・・・。

「ん?・・!なんや、ここの掃除だったんかい。」

私のくしゃみが聞こえたらしく忍足先輩が私に気付いた。

「はい。ここの掃除なん・・くしゅん!」

「大丈夫か?風邪とちゃうか?どれ。」

忍足先輩は私のオデコと忍足先輩のオデコに手をあてた。

「随分熱いなぁ〜・・。保健室行って熱測ってきた方が良いと思うで。」

「大丈夫ですよ〜。ご心配、有難う御座います。」

「ホンマに測ってきた方がええって!俺もついてったる。」

「いえ!本当に大丈夫ですから!」

「ツベコベ言わんで早ようせぃ。」

私は忍足先輩に腕をひかれて保健室に向かった。




「・・・38度・・9分・・・・。」

私が体温計の数字を読み上げる。

「はぁ!?38度9分!?」

「ん〜・・・みたいです。」

「ほな、さっさと帰らんと・・!」

「ぁ〜・・はい。」

「大丈夫か?・・って大丈夫な分けないわな。」

「大丈夫ですよ〜・・。」

「大丈夫やない。りっぱな高熱やないか。家まで送ってったる。」

「本当にだいじょ・・」

「昨日のお礼や!鞄とって来るから、そこに座っとき。」

・・・・忍足先輩と一緒に帰る・・?嬉しいけどさ、迷惑極まりないよね。



そんな事を思いつつも忍足先輩と一緒に帰らせてもらった。



「ぁりがとぅ御座いました。」

私の家の前。熱のせいかボーっとしちゃってロレツが回らない。

「ホンマに・・・危ないなあ。しっかり寝るんやで?」

「はぁい。」

「明日は無理せんでええから。」

「はぁぃ。ほんとぉに有難うござぃ・・・」

「あら・・?!」

お母さんが買い物から帰ってきたみたい。遠くから声が聞こえる。

「ん〜・・お母さん。」

「どうしたの・・・・・・って。あら、いい男。」

「でしょぉ?熱出しちゃったから送ってもらったの。先輩の・・」

「忍足侑士言います。」

「あら!わざわざ有難う。」

「いえ。ほな、俺は失礼します。」

忍足先輩は、にこっと笑って帰って行った。

「いい男v」

「ただの先輩だからね。勘違いして忍足先輩困らすような事しないでねぇ。」

「ただの先輩なのぉ〜?まぁ、あんないい男がの彼氏だったら、
お母さん倒れちゃうけどね。忍足君ね。よし、覚えとこう。」

「・・・・・寝る。」

好みって・・・遺伝するんですかね?お母さん。



























あとがき。
ん〜vおっしー初連載ドリ小w次回で終わると思いますが・・。
お母さんがお気に入り♪
というか日にちとか飛びすぎですよね。話、滅茶苦茶。
なんだか悲恋っぽくて申し訳ない。