「侑士・・・・もうすぐ卒業ですね。」
――今日こそ一緒に帰ろうな?――
私は侑士の彼女。でも2年生だから、どうしても敬語が直せないんだけどね。
「ん〜。そうやな。寂しいか?」
「はい。」
「悲しいか?」
「はい。」
「泣いてまうか?」
「はい。」
「今キスしてくれるか?」
「いいえ。」
「何でや!?・・自分、ケチやわ。」
「だって今、学校ですし。」
「誰も居らんて。ええやないか。」
「駄目ですぅ。」
「侑士ぃー!!」
「おっしー!!」
遠くから女子が2人走ってくる。侑士ファンだ・・・。
ほら、やっぱり学校でそういう事はしない方が良いんです。
侑士はモテるから・・・・。もう卒業だからって侑士ファンは忙しいみたい。
「ぉわ!?」
「やっと見っけたぁ!」
「あれ?彼女さんだぁ。ぅ〜ん。邪魔したかな?でも、もうすぐ卒業だし、許してネ。」
「邪魔や!」
彼女達は侑士の腕にガッシリつかまっていた。
本当は許したくないけど・・・しょうがないか。
「ぁっ!侑士、ごめんなさい。卒業式の準備で忙しいんでした!じゃ!!」
「ちょっ・・」
半分ウソで半分ホント。でも、こんな事でも言って逃げないと身がもたない。
ヤキモチ妬いてる、なんて知られたら・・・嫌われちゃう。
次の日。
用事があって3年の階に行っていた私は侑士の事が少し気になって教室の前を通ることにした。
今思えば・・・通らなきゃ良かった。
教室をチラっとのぞいて見ると案の定、侑士は女子に囲まれていた。
侑士は・・彼女の私よりも侑士ファンといる時間の方が長い。
「ぁ〜・・通らなきゃ良かった。」
もぅ気分は最悪。このまま次の授業はサボってしまいたい気分。
でも、こんなの1ヶ月近く続いてるけどね。
とりあえずサボるのはヤバイかと思って自分の教室に戻ることにした。
そのとき、突然後ろから声がして・・・・嬉しかったよ、侑士。
「!!」
「・・侑士、どうしたんです?」
頑張って笑ってみせる。
「ぃや・・・姿が見えたから居ってきたんやけど・・・・・とくに用事はないねん。」
用事もないのに追っかけて来てくれて嬉しかった。
「用事なんてなくて良いじゃないですか。」
万遍の笑顔で答える。
「ぁ〜、そうや!今日こそは一緒に帰・・・・」
「侑士先輩!」
「せんぱぁ〜い!」
・・・・昨日とは、また違う侑士ファン・・。しかも1年だよ・・・勘弁して下さいって。
「じゃ、私忙しいんで戻りますね。」
「ぇ・・!ちょい待・・・」
なんだか今日は侑士をちょっとシカト。嫌われるなぁ〜・・・。
でも人前で泣くなんて事になっちゃったら嫌だから・・・・卒業までだし・・。
本当は侑士の言おうとしてた事分かってる。『一緒に帰ろう』って言おうとしてくれたんだよね?
最近は全然一緒に帰ってないもんね。
・・本当は一緒に帰りたかったけどあの場に、あれ以上いれなかった。
こんなに人にヤキモチ妬くのは初めて。・・・ずいぶん重症だね。
結局こんな事が卒業式当日まで続いた。
そして卒業式当日。
卒業式が終わって部活で集まるみたいで私もテニス部マネージャーだし
・・・行かなきゃいけないよね・・。
「!これから先輩達に挨拶するから来るでしょ?」
同じ女子マネの友達に誘われる。・・・行きたいけどさ・・
行って侑士が他の女子に囲まれてるのなんて見たくないよ。
「ごめん!先生に呼ばれちゃって・・・ごめん!!代わりに先輩達に挨拶しておいて!」
ウソ。これは正真正銘ウソ。
別に出なくても大丈夫みたいだし・・・。ごめんなさい。
校内で待機。2年の階は誰もいない。静か・・・・。
「はぁ〜・・。」
もう、ため息の嵐。幸せも全部逃げちゃってるだろうから、もう逃げる幸せもないよね。
「何ため息なんてついてるん?」
この声は・・・侑士だ!
「侑士・・どうしたんですか?」
「どうもこうもない。サボりおって。」
「侑士だってサボって来たんじゃないですか。まだ挨拶終わってないみたいですもん。
・・・・私は今用事が終わったんです。」
「ウソつけ。」
「・・私、先生に気に入られちゃってるんで結構大変なんですよ。」
苦笑いをしてみる。
「俺・・今、先生にめっちゃヤキモチ妬いたわ。」
「ぇ・・・?」
「けど、今先生に呼ばれた言うのはウソやろ?」
「・・・・御免なさい。」
「俺には、お見通しや。けど・・何でそんな嘘ついたんや?」
・・・もう駄目。これ以上は・・・・。
「侑士・・もぅさよなら。ごめんなさい。」
「はっ?」
私は、また逃げようとした。でも今回は二度と戻ってこない。
「ちょい待ち!」
侑士は私の腕を引く。
「どういう事や?」
「・・・・だから、侑士とは・・これ以上一緒にいられません・・・。」
「何でや。」
だって・・・・私完全に侑士に嫌われてる。
「何でや・・?」
侑士は理由を言うまで放してくれないみたい。
でも言わない。これ以上嫌われたくない。
「・・っ・・・・・。」
涙が溢れてきた。なんで、よりにもよってこんな時に・・・・。
「そんなに俺の事嫌いになってしもうたんか・・?」
違う。前よりも、ずっとずっとずぅっと大好き。
けど・・・・。
「なぁ・・・?」
でも・・・・。
私は自分の侑士に対する『好き』を分かっていなかったみたい。
自分が思っているより、ずっとずっとずっとずぅっと大好きみたい。
「・・・・・・・ヤキモチ妬いちゃったんだ、私・・。そんな私じゃ侑士に嫌われちゃうから・・。」
ぁ〜あ。言っちゃった。もう完全に嫌われちゃった。
「ヤキモチ・・・?」
「だって侑士が他の女の子と話してるの見てたら嫌だなって思っちゃって・・・!!」
「俺の事・・嫌いになった訳やないんやな・・・?」
「なるわけ無いじゃん!前よりも、ずっとずっとずぅっと大好きだよぉ!!!」
「・・・良かった・・。嫌われたんと違うかって思ってたんや。」
「侑士は・・・こんな私、嫌いになったよね・・?」
「なるわけ無いやろ、ド阿呆。」
「へ・・?」
「むしろ前より、もっと好きや。・・ヤキモチ妬いてくれたんやろ?めっちゃ可愛いやん。」
侑士は私の涙をそっと拭ってくれた。
「侑士ぃ・・・・・・ごめんなさい・・!もう、さよならなんて言わない・・・ずっと一緒に居たい・・!」
私は侑士の胸に泣きついた。
「俺も・・気付かんかって悪かった。」
侑士は抱きしめてくれた。ちょっと痛かったけど・・嬉しかった。
「せやけど、俺が抱きしめたい思うのも、可愛い思うのも、離したくない思うのも、
キスしたい思うのも、好きや思うのも・・、お前だけなんや。」
「・・ありがとう。」
「そういえば、敬語直おっとるな。一歩前進ってトコか?」
「かもね。」
そして唇をそっと重ねる。
「今日こそ一緒に帰ろうな?」
あとがき。
初めてのドリーム小説。
急に思い立った卒業ネタ。2時間ぐらいで書き上げたので無茶苦茶です。短いです。御免なさい。
感想など頂けたら嬉しいですv